速筋と遅筋の違いと役割。【陸上・ランニング・マラソン】

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なんの知識もなく、持論に頼って陸上の練習に励む人は多々いる。僕も昔はそうだった。

しかし、生体についての基礎的な知識を持たずに練習していると、いつか必ず痛い目を見る。

オーバートレーニングや故障を防ぐには、必要最低限のことをきちんと学ぶ必要があると僕は考えている。

だが、得てして専門的な内容の勉強とはだるいものだ。例を挙げよう。

「グルコースが分解されピルビン酸となる過程においてATPが生じる。このエネルギー産生系を解糖系という」

これを読んで内容がすぐに理解できるひとは、いったいどのくらいいるのだろうか。

この内容は運動生理学で言えば基礎の”き”にあたるものだが、それでもこのとっつきにくさである。

3年前までの僕だったら、この文を読み始めて2秒で寝落ちする自信がある。

生理学を難しくしているのは、文中に出てくる「グルコース」「ピルビン酸」「ATP」「解糖系」など訳の分からない単語だ。

これらの単語ひとつひとつの意味を把握するまで、生理学の内容を理解することができないようになっている。単語の暗記が必要な英語の学習と何ら変わらない。

しかし、生理学について基礎的なことを理解するだけで、”走る”ということの見え方が大きく変わる。

僕はこのことを、出来るだけ多くの人に分かってもらいたい。

ということで、僕が生理学を「あるものに例えて」説明してみたいと思う。

あくまで例えなので実際の生理学との間に若干のギャップが生じてしまうことは防げないが、大枠さえ理解できれば生理学を陸上の練習へ応用することは十分可能だと僕は思っている。

できるだけ多くのランナーに「生理学を理解することの意義」を伝えられたら本望だ。

 

速筋と遅筋

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photo by Robert Fornal(CC-BY SA)

僕たちの筋肉は、速筋と遅筋に分けて考えることができる。

速筋と遅筋を僕流に例えるならば、遅筋は日本のサラリーマンで、速筋はウルトラ星のウルトラマンだ。

 

サラリーマン(遅筋)の特性

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photo by Ashley Campbell(CC-BY SA)

言わずもがな、日本の経済を支えているのは寝る間を惜しみ働くサラリーマンだ。

彼らの強みはとにかくタフなところで、上司からなじられても決してへこたれず、淡々と仕事をこなす。

派手さはないが、黙々と目の前の仕事に取り組むその姿勢は感嘆に値する。

【解説】

【サラリーマン】

サラリーマンとは、すなわち遅筋のことだ。

遅筋の特徴は、持久力の高さ。日常生活でのほとんどの動作は、遅筋が中心となって行っている。僕らが日頃お世話になっているのは遅筋様なのだ。

 

【日本の経済を支える】

日本中に無数に存在するサラリーマンが働く事によって、日本経済は支えられている。

遅筋もこれと同じで、体中に存在する遅筋が働く事によって、日常的な身体運動を行う事ができるのだ。具体的には、歩く、立ち上がる、ご飯を食べる等の動きは、ほぼすべて遅筋が活動している。

※ちなみに、生まれてから死ぬまで動き続ける心臓は、ほぼ遅筋線維でできている。

 

・・・

そんなある日のこと。

怪獣の出現

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photo by Michael Verhoef(CC-BY SA)

サラリーマンがいつものように会社へ出勤しようとすると、突如街中に怪獣が出現した。

怪獣は火を吐き街を焼き払っていく。慌てる会社員。

自衛隊(サラリーマンと一緒と仮定)が出動し怪獣に攻撃を仕掛けるが、怪獣には蚊に刺された程度のダメージしか与えられず返り討ちにあってしまう。

日本はこのまま滅んでしまうのだろうか。

 

【解説】

【怪獣】

怪獣とは、すなわち身体に大きな負荷がかかる運動のこと。

ランニングで言えば、息が切れる速度が怪獣レベルに相当する。もちろん、100mの全力疾走も怪獣レベルだ。

日常の中で、速筋が動員されるような動作を行う事はほとんどない。

本気で重いものを持ち上げるときとかくらいだろうか。

 

【サラリーマンでは歯が立たない】

遅筋は持久力には優れるが、瞬発力はいまひとつ。

怪獣レベルの運動をこなす能力はないため、いざという時にはイマイチ頼りにならない。

 

・・・

と、ここで。

ウルトラマン登場

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photo by Shinichiro Hamazaki

ヘア!

怪獣がサラリーマンの手に負えそうにないとみて、ウルトラ星でゴロゴロしていたウルトラマンが怪獣を倒しに地球にやってきた。

自衛隊の攻撃は通用しなかったが、さすがウルトラマン、怪獣をみるみる消耗させていく。

自衛隊もウルトラマンに協力し、引き続き爆撃による攻撃を続ける。

しかし怪獣はまだ倒れない。なかなかしぶとい奴だ。

 

【解説】

【ウルトラマン】

ウルトラマンとは、すなわち速筋のこと。

遅筋(サラリーマン)の手に負えない仕事を、速筋が受け持つというシステムが身体のなかに存在する。

 

【怪獣をみるみる消耗させる】

速筋はその名の通り、瞬間的に大きな力を出すことに優れる。

そのため、怪獣レベルの運動も、速筋の力を借りればなんとかこなすことができるのだ。

 

【自衛隊も引き続き攻撃を続ける】

ここが特に重要で、ウルトラマンが来た後も、自衛隊=遅筋は速筋と協力して筋力発揮を続ける。

ウルトラマンが来たからといって、安心して働くのをやめたりはしないのだ。

いかなるときも働き続ける遅筋線維・・。まったく、頭が上がらない。

 

・・・

すると、さらに。

ウルトラマンさらに登場。

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photo by is vin singh(CC-BY SA)

ヘヘヘヘヘヘア!(エコー)

ウルトラマン一人では怪獣を倒しきれなさそうだということで、他のウルトラマンも駆けつけた!

しぶとい怪獣も、これにはさすがに参った様子。

 

【解説】

【他のウルトラマンも手伝いにくる】

筋力発揮を段階的に強めていくと、「サイズの原理」というものに従って、さらに多くの速筋線維が参戦し、力を貸してくれる。

サイズの原理とは・・・

大きな力を必要としない動きのときは遅筋が働き、発揮する力が大きくなるにつれて、速筋も徐々に動員されていくという筋力発揮のシステムのこと。

 

・・・

タイムリミット

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photo by kssk(CC-BY SA)

ぴこん!ぴこん!

そのとき、ウルトラマン達の胸のライトが光った。

そう、ウルトラマンは地球で3分までしか活動できないのだ。

くそ!あとすこしなのに…!

 

あとすこしなのにー!!

 

 

【解説】

【ウルトラマンは3分までしか活動できない】

ウルトラマン=速筋は非常に頼りになるやつなのだが、唯一の弱点はすぐ疲れて動けなくなるところだ。

速筋が依存しているエネルギー産生系は、おおよそ20〜30秒も経ったらその活性が弱まってしまうという性質を持っている。本物のウルトラマンの、実に6分の1以下の活動時間だ。

速筋線維(ウルトラマン)を動員してもどうにもならないとき、人はそれ以上筋力発揮を維持することはできなくなる。つまり、根性で陸上は語れないのである。

 

まとめ

なんだかよけい分からなくしてしまったような気がする。

ま、まあ、とりあえず・・・速筋と遅筋の違いはだいたいこんなかんじです。震

要は僕らの身体の中では基本的にサラリーマンが働いてくれていて、ヤバい時にはウルトラマンも助けにきてくれるって言うことです。

 

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