【トレーニング理論】リカバリーを軽視するランナーは決して速くなれない【ランニング/マラソン/陸上】

「トレーニングさえ頑張っていれば、速くなれる。」

そう勘違いしているランナーは少なくない。

確かに競技力を伸ばしていく上でトレーニングは欠かせないが、トレーニングと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なものがある。それは、トレーニングを行った後の「リカバリー」だ。

あなたは「超回復の原則」という言葉を聞いたことがあるだろうか?超回復の原則とは、トレーニング後に体力が回復すると、運動前より少しだけパフォーマンスが向上するという「トレーニング理論」のこと。

つまり身体は疲労させることで強くなるのではなく、

そこから回復することで強くなるのだ。

トレーニングの基礎となる理論は他にもいくつか存在するが(全面性の法則や個別性の法則など)、特に重要度の高いものが「超回復の原則」であると僕は考えている。

この記事では、多くのランナーが軽視しがちな「リカバリー」を中心に、

  • 最適なトレーニングのバランス
  • 疲労回復の判断方法
  • おすすめなトレーニング方法
  • スランプから脱する方法

などについて解説する。

長編となってしまったが、この記事が懸命にトレーニングに励むランナーにとって少しでも助けになれば本望である。

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【トレーニング】練習と回復のベストなバランスは?

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練習量はとにかく増やせばいいというものではない。これについては、筋トレを例にとって説明しよう。

筋トレを行うことで効率よく筋肉を太くしようと考えた場合、筋トレを行う頻度は週何回が最適なのだろうか?

週5回?6回?あるいは、毎日?

 

答えは週2回だ※。

つまり、トレーニング効果を最大化させるために重要なポイントは「トレーニング量をがむしゃらに毎日行うこと」ではなく、「トレーニング」と「リカバリー」のバランスにあるのだ。

補足
これは、最大負荷の80%で10回前後×3-5セット行ったときの研究結果だった。気がする。(曖昧ですみません)
もちろんトレーニング強度や部位、トレーニング歴などさまざまな条件によって最適なトレーニング頻度は変わる可能性がある。しかし少なくとも、むやみやたらと体を疲労させればよいというものではないことだけは理解してほしい。

 

【トレーニング】ポイント練習のベストな頻度は?

ポイント練習(インターバル走やビルドアップ走などの高強度トレーニング)を行う頻度は、基本的には週1〜2回がベストだと考えられている。なぜならポイント練習による疲労から回復するには、少なくとも2〜3日かかるからだ。

毎日インターバル走を行いたい!なんて人は少ないと思うが、トレーニング計画を立てるときには、基本的に高強度トレーニングの頻度は週2回までとなるようにしよう。

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【トレーニング】ポイント練習以外の日の練習はどうすればいいの?

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photo by Stuart Richards

ポイント練習の翌日や翌々日などの「ポイント練習以外の日」は、どんな練習を行うべきなのだろうか?

これについては、遅筋の特性から考えると答えが出る。

遅筋は主に日常生活の中で活躍する筋肉であり、それだけ運動刺激に慣れている筋肉とも言える。そのため、遅筋は「疲労からの回復が早い」「刺激がないことよって退化しやすい」という特徴がある※。

このことから、たとえ高強度トレーニングを行った翌日であっても、持久力を維持するには低強度トレーニング(ジョグやサイクリングなど)を行う必要があることがわかる。また、疲労回復の観点から言っても、高強度トレーニングを行った翌日に軽い運動を行うことで活動筋に新鮮な血液を送ることができ、合理的である。

最低限の運動を継続しながら速筋やその他の器官が回復するのを待ち、回復したら再びポイント練習を行う。

このようなトレーニングの流れが、競技力を伸ばす上では理想的だ。

補足※

宇宙飛行士が「宇宙空間に滞在する前」と「滞在した後」の筋肉量を測定した研究では、速筋の筋肉量はそれほど変化しなかったが、遅筋(特に下肢のもの)は筋肉量の低下が著しく、部位によっては数十%も細くなってしまったことが報告されている。これは少々極端な例だが、遅筋の持久力を維持するためには、できるだけ毎日、最低限の運動刺激を遅筋に与え続けた方がいいと考えられる。

トレーニング計画の例外:合宿

「しかし、トップレベルのランナーは合宿などで毎日体を追い込み続けているじゃないか!」と反論する人へ。

たしかに、数日から数週間にわたって疲労を溜め続け、その後回復させることで競技力を高める方法もあるようだ。しかしこういったトレーニング方法は非常に難易度が高く、疲労との間でギリギリの駆け引きを行う必要がある。少し間違えば故障するか、かえって調子を下げることになるだろう。

例えばオリンピック代表に選ばれるような一流の長距離ランナーが、大会の直前に怪我をしてしまい実力を発揮できなかったという話は尽きない。トップレベルの選手はそれこそ人生をかけて競技に取り組んでいるため、ある面では仕方がないとは思うが、少なくとも一般人がトレーニングを行う上では、そこまでシビアに疲労と駆け引きを行う必要はないだろう。

もし疲労を限界まで溜めることでパフォーマンスを引き上げたいのなら、疲労との駆け引きに負けないだけの「知識」「経験」「集中力」を持ってトレーニングに取り組むべきだ。

 

 

「怪我さえなければ・・・」は甘え

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photo by Randi Hausken

「順調に練習をこなせていたのに、大会1ヶ月前になって怪我をしてしまった。怪我さえなければ、きっと大会でいい成績を残せたはずなのに。はぁ、運が悪かったなぁ。」

怪我をしたときに、それを不運のせいだと解釈する人がいるが、それは間違いだ。大抵は「使いすぎ」「筋力不足」「アライメント不良」などが怪我の主な原因であり、それらの原因を取り除くことができれば大抵の怪我は防ぐことができる。

また、長距離ランナーの怪我は徐々に痛みがあらわれる場合が多く、「前日までまったく問題なかったのに、今日になって突然走れないほどの痛みが出た!」というケースは案外少ない。多くの場合、痛みを我慢して練習を続けてしまうことで怪我を悪化させ、走れないような状態にまで自ら追い込んでしまうことが原因だ。

そうならないよう、少しでも痛みが出てしまった時点でトレーニング内容を見直そう。具体的には、以下のような方法で身体への負荷を軽減することができる。

  • スピードトレーニングを減らす
  • 柔らかい路面を走ることで負担を減らす
  • 痛みの原因となっているアライメント不良・筋力不足を矯正する
  • 練習自体をストップする

 

ただし、痛みへの対応策は状況によって変わる。自分自身で痛みの原因を考え、必要があれば深い知見をもつ人に相談し、怪我を治すために最善を尽くしてほしい。改善策がわからないのであれば決して無理はせず、1週間ほどランニングトレーニングを休み、自転車トレーニングや水泳など足への負担が少ないトレーニングに切り替えるなどして様子をみよう。

1週間で治るはずの故障を、わざわざ完治まで数カ月かかる大怪我にしてしまうことはない。

【トレーニング】疲労から回復したと判断する目安

every once in a while in your life you reach a decision point. a crossroad leading left or right. you can not look far enough to make the perfect step, but you have to decide anyways. is it left or right? or even turning back?

photo by Carsten Tolkmit

ポイント練習は週2回が目安であることをすでに述べたが、トレーニング内容やあなたのトレーニング歴などによって回復に必要な日数は変わる。週1回のポイント練習が最適な人や、あるいは週3回のポイント練習が最適だという人もいるだろう。

ではポイント練習を行う頻度について判断するには、何を目安とすればいいのだろうか?

これには、練習時、走り出したときの「感じ」を参考にしてほしい。

ウォーミングアップ時にスッと走り出したときのペース、身体の感覚、辛さが、普段と比べてどうか。また、流しを1ー2本行ったときのスピードのノリは悪くないか。これらを普段の練習時の感覚と比較することによって、コンディションについてある程度把握することができる。

例えば、ウォーミングアップのペースは毎日同じであっても、それを「きつい」と感じる日もあれば、「楽だ」と感じる日もある。また、流しを行ったときのペースが速い日もあれば、いまいちスピードの乗らない日もあるはずだ。それらを「評価の軸」として、直感も頼りにしながらコンディションについて判断することが大切である。

「あ、今日は調子悪いかも・疲労たまってるかも」と感じた日は、練習強度を落としたほうがいい。

調子が悪いと感じた日にインターバル走などを行うと、大きくコンディションを崩す要因となるからだ。

 

トレーニングに心拍計を活用する

心拍計付きのランニング用ウォッチを活用し、ランニング中の心拍数を計測することも非常に有効だ。心拍数は自律神経の働きと密接に関わっており、疲労が心拍数の数値に反映されることがよくある。

僕自身、現役時代に心拍計を活用したことで、コンディショニングをかなり楽に行うことができた。心拍計付きのウォッチは安くはないが、それだけの価値があると僕は考えている。

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練習記録を正しく残す ー ボルグスケールの活用

ボルグスケール

また、客観的に自分のコンディションを把握するのに役立つのが「練習日誌」だ。練習日誌には、ウォーミングアップと本練習の内容と併せて「ボルグスケール(主観的運動強度)」「心拍数(可能であれば)」をそれぞれ記録しよう。

ボルグ・スケールとは、運動時に個人が「きつい」と感じる段階を数値で表した、主観的運動強度のこと。スウェーデンの心理学者であるボルグが開発したもので、主観的な「きつさ」を15段階で表すことにより、運動時の精神的負荷を「見える化」することができる。現在は、0〜10までの11段階に簡略化された「新ボルグスケール」もスポーツ現場でよく用いられるようだ。

毎日のトレーニングを記録し続け、現在のトレーニング内容・コンディションと比較することによって、「身体からのメッセージ」を浮き彫りにすることができる。

 

「ビルドアップ走」は魔法のトレーニング

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photo by Timothy Takemoto

「ウォーミングアップ」と「流し」の感覚を頼りにコンディションを把握することについて上述した。しかし日々練習を行っていると、ウォーミングアップ時には身体が重かったのに、本練習では案外調子が良かった、ということが度々起こる。そこで、本練習を行うべきか判断に迷ったときにおすすめしたい練習が「ビルドアップ走」だ。

ビルドアップ走は走り出してから徐々にペースアップしていく、主に持久力向上を目的として行われるトレーニングの一つ。多くのランナーはビルドアップ走のことを「ペースを無理やり上げていく練習」と考えているが、ここでのビルドアップ走は「ペースが自然と上がっていく練習」のことである。「ペースが上がること」と「ペースを上げること」は似ているようでまったく違うことなので、よく注意してほしい。

あなたには、ジョグをしていたら勝手にペースが上がっていったという経験はないだろうか?ビルドアップ走はそのイメージに近く、身体の声に合わせてペースを上げていくことで、無理なく身体を追い込むことができる。この練習方法であれば、コンディションが悪いときにはペースは上がっていかないため過負荷となりにくく、逆にペースが上がっていったときには本練習としての強度も十分期待できる。

ぜひあなたのトレーニング計画に、ビルドアップ走を組み込んでほしい。

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リカバリーを早める方法-栄養面から

ここまで、疲労から回復することの重要性、疲労について正しく把握する方法について解説してきた。ここからは、疲労状態から少しでも早く回復する方法について解説していく。

運動直後の筋疲労のメカニズムは、以下の3つが原因として考えられている。

  1.  疲労物質の蓄積
  2.  エネルギー源の枯渇
  3.  内部環境の失調

①に関しては運動直後にウォーミングダウンを行うことで、②③に関しては適切な栄養補給を行うことで、回復を早めることが可能だ。次に、運動後に補給するべき栄養素について具体的にみていこう。

リカバリーを早める方法①タンパク質を摂取すること

高強度運動を行うと、メカニカルストレスによって筋肉は微細に損傷する。また、筋肉内では常に分解と合成が行われているが、運動直後は一時的に分解が亢進し、筋肉は破壊されていく。これを食い止めるのに、「運動直後のタンパク質(アミノ酸)摂取」が効果的であることが報告されている。

そのため、運動直後にはアミノ酸(特にBCAA)の含まれるサプリメントを摂取することで、筋肉の余計な分解を防ぐことができ、結果として疲労からの回復が早くなることが考えられる。

リカバリーを早める方法②糖質を摂取すること

運動中は主に、筋肉・肝臓に蓄えられているグリコーゲンや血中グルコース(つまり糖質)、脂肪組織に蓄えられている脂質がエネルギー源となる。これらのうち、運動後に補給が必要となるのが糖質だ。

脂質は体内に数万kcal蓄えられており、ちょっとやそっとの運動で不足することはまずない。そのため、運動後にあえて脂質を補給する必要性は低いと言える。

これに対し、糖質は体内におよそ2000kcal程度しか蓄えることができず、運動後に不足しやすくなっている。30分程度の軽い運動であれば特に気にしなくていいが、マラソンなどの長時間にわたる運動や、高強度トレーニングを行う場合には糖質の消費量が増えるため、運動後に補給してやることが非常に重要となる。

「え?脂質がたくさんあるんだから、わざわざ糖質なんて補給しなくてよくない?」と思った方のために補足説明。

体内のグリコーゲン量のうち約40%(約800kcal)を使ってしまうことで、パフォーマンスが著しく低下してしまうことが報告されている。体内に蓄えられている脂質のエネルギー量は膨大だが、脂質だけ残っていても、運動を継続することはできないのだ。

また、糖質の補給には「タイミング」が非常に重要となることも覚えておいてほしい。運動後出来るだけ早く糖質を摂取した方が、筋グリコーゲンの回復は早くなる。運動から1時間後に糖質を摂取していたのでは手遅れだ。

運動後できる限り早く「アミノ酸」と「糖質」を摂取することで、疲労からの回復を早めることができるだろう。学生の部活動など、状況によってそれらを行うことが難しい場合もあるかもしれないが、糖質入りのプロテインを練習場所に持参するなどし、練習後の栄養補給はできる限り怠らないよう心がけよう。

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【ちょっと脱線】「30kmの壁」を越えるには

筋グリコーゲン濃度とパフォーマンスの間には密接な関わりがあり、筋グリコーゲン量がおよそ60%(約1200kcal)を下回ると、ランニングペースを維持できなくなってしまう。

実際、マラソンなどの持久系競技を行ったランナーは「25〜35km地点(走り出してから1時間半〜2時間半)を越えたところでガクッとペースが落ちてしまった」「30kmの壁に阻まれた」と話すことがあるが、その主な原因が「活動筋における筋グリコーゲン濃度の低下」である。

そこで、マラソンの数日前から糖質を積極的に摂取することでグリコーゲンの貯蔵量を増やし、後半のペースダウンを抑えようとする「カーボローディング」が、ランナーの間では盛んに行われている。カーボローディングは生理学的にも理に適っており、一定の効果は期待できそうだ。

しかしその効果には個人差があることも報告されているため、可能であれば大会より前にカーボローディングを試し、自分の身体に合うか確認しておこう。

また、後半の失速を抑えるためにはマラソン中の糖質補給も重要となる。ウェストポーチなどに小型のゼリー飲料を入れ、マラソンの邪魔にならない形で携帯することで、マラソン中もロスなく糖質を補給することができるだろう。

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【コンディションを見極める】「あれ?身体(足)の調子がおかしいな・・・」と思ったら

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photo by Dylan

どれだけ緻密にトレーニング計画を組み、最適と思われるトレーニングを行っていても、故障や不調を完璧に防ぐことはできない。

  • 膝が痛い
  • 股関節に違和感がある
  • 感覚とタイムが一致しない

こういった違和感を感じたら、すぐに練習内容を見直そう。

順調に練習を継続できているときに練習内容を変更するのは、非常に勇気がいると思う。しかしそこで身体を追い込み続ければ、間違いなく症状は悪化していく。歩くことさえままならなくなるほど重症化させてしまうケースも少なくない。

怪我・不調の影響を最小限にすることが、パフォーマンスを向上させる最短距離であることを胸に刻んでほしい。

 

スランプから脱する二つの方法

  • なんだかコンディションが上がらない
  • 走りにキレがない
  • うまくスピードに乗れない

ランニング歴が長くなると、誰しも不調やスランプを経験する。この原因や改善策については諸説あるが、ここでは僕が8年間トレーニングに打ち込む中で編み出した「スランプから脱する方法」を2つ書きたいと思う。

スランプから脱する方法①神経系に刺激を与える

一つはスピードトレーニングやプライオメトリックストレーニングなどを行い、神経系に刺激を与えることで「キレ」を戻す方法だ。

具体的なトレーニング内容としては、以下のようなものがある。

  • 100〜200m×3本×3セット、1000m×3本などスピードトレーニング
  • ボックスジャンプ、バウンディングなどプライオメトリックス

これらのトレーニングによって、ランニング時に動員される筋群や腱、骨などの共同性を高めることができ、コンディションを改善できる場合がある。

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また、裸足でランニングを行うことでも、神経系に刺激を与えることができる。靴を履いて走ると接地のポイントが把握しづらいが、裸足で走ると、接地の衝撃が直に伝わるため、力を入れるタイミングを掴みやすい。

コンディションが良好な日に裸足で走ってみると、接地の際に踵から脳天にかけて「カンッ」と心地よい衝撃が走る。僕が現役ランナーの頃には、時々ウォーミングアップを裸足で行い、この感覚が感じられるかをコンディションの指標の一つとしていた。

足の裏を傷つけないよう十分注意する必要はあるが、芝生の上などで一度試してみてほしい。

スランプから脱する方法②休む

スランプから脱するもう一つの方法は、休むことだ。

疲労には様々なものがあり、たとえ筋肉が回復していても内臓や神経系に疲労が残存しているケースがある。特に内臓や神経系が疲労すると回復するのに数週間を要することも報告されているため、それらの「疲労状態」に関する判断は慎重に行うべきだ。

高強度の運動中、血流が主に筋組織へ供給されることで内臓は軽い貧血状態に陥り、大きな負担がかかる。そのため高強度トレーニングや大会で身体を酷使した後、少なくとも2〜3週間は、身体の疲労状態に気を配ってほしい。

 

「神経系に刺激を入れる」か「休む」か判断するには、それまでのトレーニング内容を参考にしよう。ランニングペースの遅い練習ばかりしていたのであれば「神経系に刺激を入れる」、1〜2週間前にフルマラソンなど負荷の非常に大きな運動を行ったのであれば「休む」、といった具合だ。

 

リカバリーを軽視した僕の「苦い経験」

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photo by Craig Sunter

最後に、僕の失敗談について話しておこうと思う。

僕は大学時代、陸上競技部の駅伝チームに所属していた。大学1年生だった当時、冬に開催される駅伝メンバーを決める2ヶ月前の段階で、補欠を含めた上位12人の中に選ばれていた。コンディションを上げていくことができれば、駅伝メンバーとして本戦を走ることも不可能ではなかった。

そんな中、チームは駅伝へ向けて練習の質を本格的に上げていった。きついながらも食らいつき、2週間ほどは順調にトレーニングを消化した。

3週間目に入ったところで、右足のふくらはぎが痛み出した。しかし走れないほどの痛みではない。ここで練習を休めば、チームに置いていかれてしまう。そんな不安にかられ、僕は故障していることをチームメイトに隠し、練習を続けた。

その結果、痛みをかばいながら走り続けたことでランニングフォームが崩れ、ひどいスランプに陥ってしまった。

結局その年の駅伝は補欠に終わり、スランプから脱するのには数ヶ月を要した。

もし僕があのとき、ふくらはぎの痛みを悪化させないよう練習内容を見直していれば。自分のベストコンディションを作ることだけに集中できていれば…。

 

今でも、後悔の念は消えない。

 

まとめ

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大げさではなく、僕は「リカバリーを重視すればほとんどの故障やスランプは回避できる」と考えている。実際、僕が現役最後の年にリカバリーを中心に置いてトレーニングを行ったところ、全盛期の8割程度の練習量で、5000mの自己ベストを更新できてしまった。

現在スランプに苦しんでいる方や、故障しがちな方は、この記事に書いてある内容を胸に刻んでほしい。

 

ちなみに、本記事の内容は僕が「RUN + TRAIL」というトレイルラン専門雑誌に寄稿したものだ。

雑誌『RUN+TRAIL』に記事を寄稿しました。本気ランナーにはガチでおすすめなのでぜひご一読を。

この専門誌には、多くのランナーが直面する「胃腸トラブル」を中心に、「レース後の理想の食事」「正しいフォームとは?」「トレーニングの組み立て方(トレーニング周期の視点から)」などについて、各分野のエキスパートがこれでもか!というくらいわかりやすく丁寧に解説している。

興味のある方はぜひ一読を!