
こちらの記事の続き。
カモテス旅行3日目。
コンコン
ノックの音で目が覚めた。
うぅ、胸焼けがする・・。
昨日飲んだレッドホースの酔いがまだ身体に残っている。足元を少しフラつかせながら、返事をしてドアを開けた。
「おう。朝飯食いいこうぜ。」
昨日、カモテス観光に誘ってくれた兄ちゃんだ。時計を見ると、まだ7:15をまわった所だった。
昨日7時半に迎えにいくと言っていたから、おそらく部屋に来るのは8時頃だろうとタカをくくっていた。まさかオンタイムとは・・・。
フィリピン人は遅刻魔として有名だ。30分遅刻は当たり前、ひどい時には数時間遅れてくることもあるいう。僕はまだそこまで待った経験はないが、少なくとも待ち合わせに時間通りやってくるフィリピン人は皆無だった。
時間前に来てくれたことで、俄然この兄ちゃんに対する信頼感が増した。ただ時間を守るということが、これほどに信頼を生むとは。
[adsense]兄ちゃんのあとについていき、港に隣接する現地民向けの簡易食堂で朝食を済ませた。(50ペソ=110円)
宿に戻り、僕が身支度を整える間に兄ちゃんがバイクをレンタルしてきてくれ、いよいよカモテスツアーが始まった。(バイクレンタル550ペソ=1300円)
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カモテスツアー開始
周囲を森に囲まれた田舎道を、バイクの荷台に乗り颯爽と駆け抜ける。
日本の高速道路や、北海道の果てしなく続く一本道を走るのとはまた違った南国の雰囲気に高揚しながら、道ですれ違うバイクと挨拶をかわした。
道路の中央を野良犬が歩いており、こちらのクラクションに反応し道路の脇に避ける。まるで人間みたいだ。

カモテスのリゾート
最初の目的地には、10分ほどで到着した。

名前は忘れてしまったが、海へ飛び込み台のあるリゾート。(エントランス料1人20ペソ)
南国のリゾートなんてどこも似たようなものだろうと思っていたが、実際にはその土地によってずいぶんと様子が違う。
例えば、マラパスクア島はホワイトビーチに囲まれたフラットな地形が特徴的で、海岸に沿って宿泊宿やダイビングショップ等が程よく立ち並ぶ。
一方で、カモテス島は海に面する境界が崖のようになっているところが多く、その絶壁をリゾートの見どころの一つにしている。
そういえばオスロブも地形の凹凸が激しく、カモテス島の雰囲気に近かったような気がする。
飛び込み台

その日は平日ということもあり、僕達と釣りをする現地の若者以外誰もいなかった。
飛び込み台はなかなかの高さだ。3〜5mほどはあるだろうか。
兄ちゃんに「飛び込む?」と聞くと、まさか、と一蹴された。兄ちゃんはそのまま景色だけを楽しんで次の目的地に行くつもりだったようだ。
しかし、飛び込み台を目の前にして、飛ばない訳にはいかない。

飛んだ。一人で。
カモテス島の洞窟

次に向かったのは「TIMUBO CAVE」。
カモテスでは有名な洞窟らしく、週末にはたくさんの人で賑わうそうだ。しかしこの日は例のごとく観光客はおらず、先ほどのリゾート同様貸切だ。

ひと気のない無音の洞窟を奥へ奥へと入っていくと、数百メートルほど進んだところで大きな水たまりに行き着いた。

水たまりはぞっとするくらい澄んでいた。水底に転がる石ころ一つ一つを数えることができる。
なんと、兄ちゃん云く、ここで泳ぐことが許可されているらしい。もしこれが日本の洞窟だったら、きっと許されていないだろう。
この管理の緩さに、なんだか異国を感じる。
水着に着替え、水たまりの中でしばしの間佇んだ。
水滴が落ちる音以外、なにも音がしない。
日常生活の中で、無音というのはなかなか経験できない。例え静かな田舎などであっても、虫の鳴く声、風のさざめきなどが無音であることを妨げる。
日常から隔離された非現実空間に形容しがたい神秘性を感じながら、2人で無言の時を過ごした。
カモテス島の湖

次に向かった先は、「LAKE DANAO PARK」。
日本でも琵琶湖や田沢湖などいくつかの湖をまわったが、日本の湖とはやはり雰囲気が違う。
湖の周囲を囲う木々は南国特有の形状をしており、水の色もなんだか独特。見るからに大魚が住んでいそうだ。
公園の脇には軽食を売る露店が2〜3立ち並んでいた。ベンチに座ってぼーっとしていると、そこで働くお姉さんが試飲用のマンゴージュースを持ってきてくれた。

湖に沿って続く道をふらふらと散歩していると、ふと陸につけてあったカヌーが目に留まった。湖にはカヌーを漕ぐ人の姿など一切ないが、ひょっとして、これ乗れるのか…?
今にも崩れそうな受付小屋で訊くと、50ペソ=110円でカヌーを貸し出しているという。

兄ちゃんを誘ったら案の定また断られた。
幅数キロはある湖で、一人カヌーを漕いだ。水面はいたって穏やかだ。
ちょうど湖の真ん中あたりでとまり、しばし日光浴を楽しんだ。
純朴な視線

カモテス島は、一つ一つの観光スポットが島の各地に点在している。
その道中でたくさんの子ども達とすれ違ったが、やはり日本人が珍しいらしく、みんな僕の顔をみるなり笑顔で目配せしてくる。
田舎独特のあどけなさが、なんとも気持ちを穏やかにする。
MANGODLONG ROCK RESORT

最後に向かった先は、「MANGODLONG ROCK RESORT」。
ここは海外から来た宿泊客を対象にしたザ・リゾートだ。一泊2000ペソ程度(4500円)で泊まれるそうだが、エントランス料20ペソ=45円を払えば宿泊客でなくてもリゾート内に入ることができる。
観光客のために用意された「人工的な」ビーチを歩いていくと、カモテス島にきて初めて白人観光客を見かけた。
マラパスクアは未だリゾート地化されきっていない希少な島だと言われているが、現地民の数と同じくらいの欧米人が浜辺を闊歩しており、残された秘境とは名ばかりだなと思ったものだった。
しかし、カモテス島は住民・施設ともに田舎の良さが残っていて、観光客慣れしていない感じがする。これこそ、僕がマラパスクアへ訪れる以前に抱いていたイメージに近かった。
浜辺で日陰に寝そべり、波の音を聞いた。

1人でぼーっとするのと、2人でぼーっとするのとは、ずいぶん違うみたいだ。
話すことはなくても、誰かと一緒に空間を共有しているというだけで、なんだか心が落ち着く。
この兄ちゃんにカモテス島を案内してもらって、本当に良かった。

昼過ぎに宿へと戻ってきた。
船がくるまでの間、部屋で時間をつぶした。部屋は相変わらず蒸し暑いが、今はそれすらも心地よく感じる。
ベッドに横になって本を読んでいるうち、いつの間にか寝てしまった。
ダナウ、セブシティへ

4時過ぎ、カモテス島からダナウへと向かう船に乗り込んだ。100ペソ=230円
操縦室の脇の席に座り船の出発を待っていると、操縦室から出てきたおじいさんに声をかけられた。

エンジニアとして船に乗っているらしく、なにかトラブルがあった時以外は基本暇しているらしい。
既にお年は60を越えているそうだが、未だ現役。仕事柄様々な国へ渡航し、日本の神戸へも一度行ったことがあるそう。
雑多な話をしていると、ダナウへ着いた後はどうするのかと聞かれた。
セブシティへ帰るよと伝えると、それならバンに乗るのが安くてはやいぞと教えてくれた。
さらに、船にバイクをのせているから、ターミナルまで送ってやるという。
トライシクルに乗るから大丈夫だよと断るも、トライシクルには時々悪いやつがいるから日本人を一人で乗せるのは心配だ、と再度勧めてくれ、お言葉に甘えて送ってもらうことになった。
おじいさんの親切心に心打たれながら、雷で時折光る空を眺めた。

途中雨に降られたが船は特に揺れることもなく、無事にダナウに着いた。
バン・ターミナルまで送ってもらい、精一杯感謝の気持ちを込めて、おじいさんにありがとうと伝えた。
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【カモテス島の旅、完】